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ほくとと

所沢で地域活動をしている方々の
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NPO法人ところざわ福祉の住まいづくりをすすめる会|伊藤 博さん

伊藤 博さん

歳を重ねると足腰が弱って行動範囲が狭くなり、これまで暮らしていた家や街では暮らしづらくなったと感じることがあります。『NPO法人ところざわ福祉の住まいづくりをすすめる会(以下、とこすま)』は、そう感じる高齢者や障がい者が暮らしやすく、また介護者の負担を軽減する住まいづくりの推進に寄与するために様々な活動に取り組んでいます。今回は代表理事の伊藤博さんに、住み慣れた街や家で安心して住み続けるための取り組みや想いについて取材させていただきました

伊藤 博(いとう ひろし)さん

1953年東京生まれ。1972年、東村山市役所に就職。1981年に職員研修で手話を学んだことがきっかけで地域福祉活動に興味を持つ。2011年3月、ボランティア活動に専念するため退職し、2013年12月に任意団体として『ところざわ福祉の住まいづくりをすすめる会』を設立。翌2014年3月に埼玉県知事よりNPO法人の認証を受ける。ほか、市内での福祉ネットワークづくりや紙芝居など日々ボランティア活動に勤しんでいる。

ボランティアだからできるサポートがしたい

――地域福祉活動に興味を持ち始めたきっかけは何ですか?

勤務先の東村山市役所で参加した職員研修で手話を学んだことです。1年間、テキストの例文を暗記して勉強した私は、ろう者と接したことがないのにすっかり基本の手話ができるつもりになっていました。職員研修が満了したあと、物足りなさを感じていたので当時住んでいた東京都小平市の手話講習会に参加したところ、そこには助手として数名のろう者が参加していました。私は初めてろう者と話す機会を得たのですが、何を話しかけられているのか全然わからなくて「すみません」の手話を連発するばかり。職員研修で1年間学んだことは一体何だったのかと自己嫌悪に陥りました。同時に、勉強だけでなく日頃の交流が大切だと思ったので手話サークルに入会。その後、ろう者の友人もでき、よくカフェや居酒屋で話し込んでいました。コロナ禍になってからは会えていませんけれどね。

手話を学ぶ前は障害のある方たちとの交流の機会もなく、どう接してよいのか分かりませんでした。しかし、実際に手話で彼らと話すと、案外同じような悩みを抱えていたりすることも分かるようになり、親しくなるうちに彼らがもっと暮らしやすくなるためのお手伝いがしたいと考えるようになったのが、地域福祉活動に興味を持った最初のきっかけでした。

――安定した市役所を退職した経緯を教えてください

退退職を願い出たのは2010年10月のこと。当時、私は子育て支援に関わる業務を拝命していました。やりがいをもって取り組んでいましたが、一方ではいつしか「できない」理由ばかりを考えるようになっている自分がいることに気づき、それがたまらなく辛くなってしまったんです。例えお金がなくても、知恵を出し合えば「できる」ことはきっとある。実際、最近は子ども食堂などボランティアで成立している取り組みが増え、ずいぶん充実したサポート体制の底上げになりましたよね。私も「できる」ことを増やすために行政ができない隙間を埋める活動がしたいと思い、退職を決意しました。

当時の市長には「伊藤さんのように強い熱意を持った人に市政を担ってほしい」と何度も引き止めていただき、とても感謝しています。もちろん収入がゼロになってしまう不安もありました。けれど私の決意は固く、また幸い妻の理解も得られたので2011年3月に退職に至りました。

その後、障害者支援のボランティアを始めたのですが、活動するうちに、ある程度の知識を持ちたいと考えるようになって、同年8月から約2ヶ月間学校に通ってホームヘルパー2級の資格を取得しました。その後、2013年には福祉住環境コーディネーター1級の資格も取得しています。

  • 手話講習会▲1985年 手話サークル活動当時の様子(写真中央:伊藤さん)
“福祉”“住まい”“まちづくり”に欠かせないのは、人と人とのつながり

――『とこすま』は、どのような想いで立ち上げたのでしょうか?

これまで多くの行政や民間事業は、“福祉”“住まい”“まちづくり”などそれぞれの分野で個別に取り組みを推進してきたように思います。しかし、あらゆる街において課題は、複数の分野で重なり合って生じるのです。

実際、所沢では中心地こそ高層マンションの増加と共に若い世代や子どもが増えていますが、ネオポリスやフラワーヒル、所沢ニュータウン、こぶし団地、椿峰、松が丘などの周縁部では高齢化が進み、高齢者比率が30%を超えている地域も見られます。これらの街は私の世代が30〜40代だった頃に開発された土地。若い頃は、多少交通が不便でも住むのに問題ありませんでした。けれど自身が高齢になり街も衰退した現在では、近隣にスーパーは少なくコンビニすら撤退することも。結果、日常生活に困っている高齢者が増えているのです。

それぞれの分野で生じている課題と向き合い、歳を重ねても暮らしやすい環境を作らなければいけないと考えていた頃、所沢地域在住在勤の方々が集うコミュニティで一級建築士の権田和司さん(現とこすま副代表理事)に出会いました。異業種のため着眼点は異なりましたが、話しているうちに“まちづくり”において共通の未来を目指していることがわかったんです。「異業種の人が集まって問題整理しないと解決しないよね」「あえて異業種を集めて一緒に活動しませんか」と話し合い、『とこすま』を立ち上げることになりました。

そして団体名(NPO法人ところざわ福祉の住まいづくりをすすめる会)には、歳を重ねても暮らしやすい環境を作りたいという想いから“福祉”“住まいづくり”と2つのキーワードを入れました。ユニバーサルデザインの視点から住まいとまちづくりの改善に取り組み、障害者や高齢者の自立支援及び介護負担の軽減につながる福祉の推進に寄与することを目的にしています。

  • 権田和司さん▲今回の取材では権田和司さん(写真中央)にもお話を伺いました

――異業種の人が集まることで、どのような効果が生まれますか?

『とこすま』には一級建築士、宅地建物取引士、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター、行政書士など様々な業種の人が集まっています。みんなで話していると、水と油のように混ざり合わないものを感じることが多々ありますが、だからこそ良い。一つの課題に対して多角的に見られるし、全方位に配慮した提案が生まれるんです。

しかし、まずは相互理解をする必要があります。例えば“生保”と聞いたとき、多くの方は“生命保険”を思い浮かべると思いますが、福祉に関わる私は“生活保護”を思い浮かべます。業種が異なるだけで、略語一つとっても噛み合わないんですね。そこで『とこすま』の立ち上げには1年間の準備期間を設け、互いの認識をすり合わせながら高齢化社会における「福祉のまちづくり」「理想とする“まち”の定義」などについて何度も話し合いました。私のような福祉の人間だけではないからこそ、いまの『とこすま』が生まれたと思っています。

――『とこすま』では具体的にどのような活動をしているのですか?

コロナ禍以前は、介護者や要介護者向けの勉強会や高齢者施設見学会などのイベントを企画・開催していました。社会福祉協議会と連携して、高齢者や障害者の生活を支える車椅子などの様々な器具を紹介した『住まいの福祉環境づくり展』や無料相談会を開催したこともあります。2019年には5年間の活動の集大成とも言える『高齢期の住まいのことを考えておきたくなる小冊子』を作成し、市内に無償配布しました。高齢期に在宅、あるいは施設で快適に暮らすために役立つ情報をまとめたところ、「わかりやすい」「これからの生活のヒントになった」などとご好評いただいたので、現在第2弾を準備しているところです。

この小冊子の特徴は、親の介護問題を抱えている40〜60代に向けて啓発していること。福祉関係の方が開催する勉強会の多くは、要介護者に向けた介護予防セミナーが多いのですが、私たちは介護している子世代や事業者に向けた啓発活動もおこなっています。そのため一般の方以外に、設計事務所や工務店の方、ケアマネジャー、作業療法士、デイサービス管理者など多様な専門職の方々にも参加いただいているんです。2020年からはコロナ禍ということで人を集める勉強会は開催できず、代わりに『会報とこすま』の発行による情報発信に力を入れてきました。状況を見ながら、また勉強会などの開催を再開したいですね。

  • 高齢期の住まいのことを考えておきたくなる小冊子▲『高齢期の住まいのことを考えておきたくなる小冊子』

――『とこすま』以外にはどのような地域福祉活動をしていますか?

私自身が暮らしている富岡地域で『所沢市富岡地域福祉ネットワークおっぺすとみおか』に参加しています。十数年前に立ち上がり、最初は民生委員や自治会長が中心に動いていましたが、いまはほとんど一般のボランティアが活動しています。地域で暮らす人同士を繋げるイベントを企画しており、月に一度定例会があるほか、コロナ禍以前は茶話会などを開催していました。現在は『おっぺすとみおか』という会報誌をつくり、情報を発信しています。

また、個人的な活動として『紙芝居ひろしちゃん』という活動名で、昔懐かしい紙芝居もおこなっています。回想法という、昔の話を引き出すことによって認知症の状況を好転させる療法があるのですが、その観点から高齢者の認知症予防などに役立つのではないかと考え始めました。紙芝居は基本的に高齢者向けで、デイサービスや老人ホーム、サロンなどでお話していますが、声をかけていただいたら子ども向けのイベントにも参加します。

そのほか、フードバンクにも関わっています。フードドライブ活動に協力し、近所の方から食料を寄付してもらってフードバンクの事務所に届けているんです。

  • ひろしちゃん▲『紙芝居ひろしちゃん』として高齢者向けに紙芝居をする伊藤さん

――これらの地域福祉活動を通して、“住まい”や“まち”に必要なものは何だとお考えですか?

人と人とのネットワークですね。どうしたらより暮らしやすくなるか、共に考え、助け合えるコミュニティがあると、良い“まち”になるのではないでしょうか。

特にコロナ禍では、高齢者同士が実際に会って声を掛け合うことができなくなりました。若い方はオンラインという手段がありますが、高齢者にはハードルが高いですからね。またずっと家にいるため、心身ともに健康の不安が出てきた方も多いことでしょう。そうした中で、人と人とのネットワークがあれば孤独や不安を感じずに過ごせます。

安心して暮らし続けるためには、何かあったときに相談できる人がいるかどうかが重要です。特に高齢者は、色々な意味で孤立させないことが大事。いまは昔ながらのご近所付き合いがなくなっています。けれど人は一人では生きられません。だからこそ誰かとコミュニケーションを取れる環境を作ることが重要なのだと思います。

『とこすま』で有用な情報発信、紙芝居でみんなを笑顔に

――今後の活動予定を教えてください

前述しましたが、『とこすま』では現在『高齢期の住まいのことを考えておきたくなる小冊子』の第2弾を準備しています。前回は「在宅で暮らす住まいの工夫」と「自分に合った施設選び」について幅広い情報を掲載しました。今回は“在宅”にフォーカスして、より具体的な高齢期における住まいの工夫を掲載する予定です。また家族やご自身が認知症になったとき、どのように住まいを工夫したら良いかも紹介しようと考えています。この冊子は作ることがゴールではありません。皆さんに役立ててもらってこそ意味があるので、少しでも具体的な情報が載せられるよう尽力していきます。2021年度内に完成し無償配布予定なので、もし見かけたら手に取ってみてくださいね。

あと、個人的に力を入れていきたいのは紙芝居ですね。やっていてとても楽しいし、皆さんにとても喜んでいただけるんですよ。お互いに笑顔になれるので、最高の健康法だと思っています。また紙芝居は妻にも協力してもらっているんです。いつも自宅で一緒に練習しているのですが、互いの認知症予防になっている気がしますし、夫婦の良いコミュニケーションにもなっています。そうした活動を続けながら、少しでも元気に長生きしたいですね。

-インタビューを終えて-

伊藤さんは『とこすま』の活動が軌道に乗ってきた2015年、悪性リンパ腫という病に侵されました。治療後5年以上経過したいまは完治していますが、手術前は死を覚悟したそうです。抗がん剤の治療が終わり、元気に活動できるようになった伊藤さんの胸には「1日1日を確かに生きる」決意が生まれました。そのことが、現在のアグレッシブな活動につながっているようです。

世界一の長寿国である日本において、高齢者になってからの暮らしを考えることは当たり前と言っても過言ではありません。一方で、年齢を重ねることで必要になる暮らしの改善方法について私たちは多くの知識を持っていません。そんなとき『とこすま』のように情報発信をしてくれる団体の存在はありがたいと思うと同時に、自分自身で情報を集めに行く姿勢が大事なのではないかと感じました。

今回の『ほくとと』が、地域の皆様にとって一助になればと願うと同時に、私たちも地域に根ざした企業として何ができるか、考え、行動し続けたいと思います。

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