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不動産に関するお役立ちコラムや、所沢の街づくりに関わる方々へのインタビュー、
北斗スタッフのニュースなど、さまざまな情報を更新しています。

ほくとと

所沢で地域活動をしている方々の
インタビューをご紹介します。

  • ほくとと インタビュー

所沢市自治連合会 会長|安田敏男さん

INTERVIEW

所沢市は、「となりのトトロ」の構想の元となった「淵の森」があるなど、緑豊かな自然が残されている街です。また、自治会・町内会への加入を促進するために「所沢市地域がつながる元気な自治会等応援条例」をつくり、他県の自治組織から注目されています。
今回は、そんな所沢市の自治連合会長や安松町内会長、他にも宮崎駿さんと共におこなう自然保護活動など、地域のリーダーとして活躍している安田敏男さんを取材し、自治会活動の考え方や地域活動、宮崎駿さんとの出会いなどについてお話を伺いました。

安田 敏男(やすだ としお)さん

1947年、所沢市上安松の農家7人兄姉の末っ子として生まれる。25歳で「まるとし商店」を開業、1年余で「マルトシストア」に改組し、地域初のセルフストアで年商2億円のスーパーマーケットへ成長。44歳で所沢市議に初当選し4期務める。1990年「柳瀬川をきれいにする会」を設立。1996年「淵の森の会」設立。事務局長として、宮崎駿さんと共に所沢の自然保護活動をおこなう。2009年から安松町内会長に就任し、現在、松井地区自治連合会長、所沢市自治連合会長も兼務。所沢市全体のまちづくりに尽力している。

  • 安田敏男
昭和42年、20歳で自転車日本一周を達成
地域初のセルフストアを開業

――安田さんは地域のリーダーとして精力的にご活躍ですが、安田さんのお若い頃はどんな活動をされていたのですか?

「やれることはやってみようという気持ちで、若い頃からいろんなことに挑戦してきたよ。実家は農家なんだけど、高校は川越工業高校の機械科を卒業。その後、8㎜と16㎜の映写機を作っている会社に就職もしてみたんだけど、自営業の方が性に合っていると思ってね、2年で辞めてしまったんだよ。その時やりたかったのは、全国を見てみたいということで、その頃の埼玉国体の宣伝も兼ねて、自転車で単独日本一周に出かけたんですよ」

「当時は今のように道が整備されていなかったので、苦労もしたけど、その時に体力・判断力・忍耐力が養われたように思うね」

「日本一周を終えて、やってみようと思った仕事が“商売”。所沢で一番といわれている青果店で経営のノウハウを学んで、25歳で念願の商店を開業。その翌年に『マルトシストア』にリニューアルして、地域で初めて“レジ”を導入したんだよね。そしたら、新聞に載るほど話題のスーパーマーケットになったんだよ。あの時は、必死で寝る間も惜しんで働いたな。少しでも安く買いたいという子育て世代の生活を肌で感じることも出来て、地域のために働きたいという意識が強くなった時期でもあるかな」

  • 安田敏男▲安田さんが二度目の日本一周に挑戦した自転車
不平不満の解消を目指し政治家へ
宮崎駿さんと共に「淵の森の会」を設立

――その生活に密着したご商売の影響で、地域活動をはじめたのですか?

「それもあるけど、その後の活動が大きかったと思うよ。青年会議所とか、PTAとか所沢の自然を守る活動とか、地域のための活動を始めたんだよね。すると、いろいろな世の中の不平不満が見えてきたんだよ。それで、今度は政治家を目指そうってことで、44歳の時に初めて所沢市議会議員選挙に立候補して、市議会議員になったわけ」

「自然保護活動の『柳瀬川をきれいにする会』は、議員に当選した後も地域の人たちと一緒に清掃活動をやってたんだけど、ジブリ作品の監督の宮崎駿さんが、この活動を見てくれていたんだよね。宮崎駿さんの『出発点』という本の中に『川をきれいにしたいと川の中に飛び込んでいる市議会議員がいる。その人、いつもニコニコしてちっとも議員だという肩書をちらつかせない。いつも川の中で先頭を歩いている』と俺のことが書かれていたんだよ。宮崎さんがそんな風に自分のことを意識してくれていたのは、ほんと嬉しかったよね。それで、そんな出会いの後に、柳瀬川の岸にある雑木林『淵の森』が宅地開発される計画が浮上したんだよ。もうそれは、地域の人と一緒になって何とか守ろうと必死も必死。そんな時、宮崎さんが『私もこの森が無くなってしまうのは嫌だから』と、忙しい中『淵の森の会』の会長になって、世間に訴えてくれたんだよね。さらに、開発を止めるための費用まで寄付してくれて。今も、宮崎さんが会長で、自分が事務局長をしながらボランティアのみなさんと保全活動を続けているよ」

  • 淵の森▲宮崎駿さんと一緒に保全活動を行っている「淵の森」
市長を目指すも落選
還暦後は、自治会活動に専念

――市議を引退されたきっかけは何ですか?

「市長になろうとして、選挙で負けたのがきっかけだね。なぜ市長になりたかったかといえば、市議会議員を一生懸命やっても、市長に動いてもらわないと物事が進まないんだよね。だから、市長選に立候補したんだけど、落選してね。その時の選挙活動中に『なんだ、高卒か』という声が聞こえてきたので、ならば、大卒の資格を取ってやろうじゃないかということで、翌年、駿河台大学全日制法学部に入学したんだよね。53歳だよ。みんなにびっくりされたけど、自分が実践してきた世の中の仕組みと、学問上の法律はどうなっているのかという興味もあったから」

「卒論のテーマは、『所沢市の農地の活用と緑を生かしたまちづくり』で、卒業論文優秀賞を取ったんだよ。あの時は、若い子に交じって真剣に勉強したなぁ。在学中と大学を卒業してからも、市長に立候補したんだけれど、また落選しちゃったんだよね。だからもう、政治家はやーめた!と引退したわけ」

――それで今の自治会活動に専念することになったわけですね。

「そうだね。市長に落選した時は60歳。還暦記念も兼ねて、20歳の時に挑戦した“日本一周自転車旅行”に再び出かけてみたんだよね。全国をまわって、やっぱりまちづくりには、自治会の活動が重要だと強く感じたよね。それで、2009年に安松町内会長になり、2011年には町内会長と兼務で『松井地区自治連合会』会長になり、2015年から『所沢市自治連合会』の会長に就いて、どんどん自治会活動が中心の生活になっているね」

※所沢市には250以上の自治会があり、11行政地区ごとに分けて連合をつくっている。その11の連合が連携をとって自治活動を促進する組織を「所沢市自治連合会」という。2015年に安田敏男氏が会長に就任し、自治連合会の役目は“地域と行政のパイプ役”という理念のもと、11人の会長で話し合う「11人の会長会議」を設置。会長同士が連携し合い、自治会の声が行政に届きやすいシステムに変換した。

「やすまつ祭り」、「交流館」で交流活動。
安松町内会加入率が89%に上昇

――安松町内会ではコミュニティづくりはどのようにされていますか?

「安松は、勤めに出ている人にとっては、ただ帰宅する場所となってるので、近所の関係が希薄になりがち。だから、みんなが顔見知りになれるような交流イベントが大事だと思っていてね。私が町内会長になって、まずやったことは、廃止されていた“祭り”の復活」
「祭りといえば、盆踊り大会が多いけど、うちの町内会は綱引き大会。やぐらを組む必要もないし、準備もルールも簡単だからね。特に子どもたちとジイバアが競う綱引きは、もう大人気。子どもたちはもう必死になって、負けたら本気で悔しがるくらい」

「子どもたちに面白がってもらえるイベントは、そのお父さんお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に参加してくれるようになるんだよね。今年で10回目を迎えたけど、3世代が盛り上がる祭りとして、町内会の夏の風物詩として定着してきたなぁ。この祭りが復活したお陰で、町の交流が盛んになり、安松町内会の加入世帯が571世帯から932世帯と、加入率が約89%になったんだよ」

  • やすまつ祭り▲「やすまつ祭り」での綱引き大会の様子

――町の交流は自治会加入率にもつながるのですね。ほかにはどんなことをされていますか?

「2011年に町内会の集会所として『交流館』を開設したこと。以前、ラーメン屋さんがあった17坪ほどの建物を町内会で買い取って、なるべくお金をかけずに町内のみんなでリフォームして。高齢者の『お達者クラブ』で使用したり、『健康マージャン』、『コミュニティカフェ』など、高齢者が家にこもらず、集まって交流をしてもらえる場所になっているね。ちなみに、1回利用ごとに1000円をもらっているんだけれど、それでも維持費として足りない分は 、町内会で古紙回収をやって補填してる。みんな交流館を維持していきたいから、回収に協力してくれるよね」

  • 交流館▲町内会の集会所「交流館」

――最後に安田さんの目標を教えていただけますか?

「子どもたちには、所沢の歴史を伝えて地元愛を高めたいと思っているし、所沢の豊かな緑 も残したい。柳瀬川も随分きれいになったけど、昔みたいなナナフシやタガメ、ホタルの生息を取り戻せたらいいよね。まちづくりは“やる気・元気・本気・根気・勇気”が必要。自治会長は“究極のボランティア”。これからも、子どもたちや孫たちのために、健康である限りできることをやっていきますよ」

  • 安田敏夫

-インタビューを終えて-

2時間にわたって、安田さんの豪快でパワフルなオーラを感じながら、生い立ちからのお話を伺わせていただきました。

持ち前の実直なお人柄が、多くの人から頼られ、愛されているのだと感じましたし、安田さんの活動のすべてが、「次世代の子どもたち」に自慢できる所沢を残したいということに集約されているように思いました。「自治会活動は楽しい」を実践している安田さんの姿勢は、これからも多くのまちづくりの担い手の模範となるのではないでしょうか。

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