これまで、主に居住用の不動産において人が亡くなった場合、買主に対して告知責任が生じるかのガイドラインが無く、不動産業界全体としての判断基準が曖昧でした。このことから、売主やそれを扱う宅地建物取引業者の判断で告知しなかった結果、買主が購入後に事実を知って裁判になるというケースが発生したり、賃貸においては、借主が部屋で亡くなると「事故物件」として取り扱われることを懸念し、死亡リスクの高い単身高齢者の入居をお断りしているオーナーも多い現実がありました。
今回、このような心理的瑕疵に伴うトラブルを未然に防ぎ、不動産の円滑な流通・取引を促すために、国土交通省より「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が示されました。
このガイドラインでは「自然死」と「日常生活の中での不慮の死」については告知にはあたらないとされ、具体的には老衰や転倒事故、食事中の誤嚥などは原則告知事項には含まれないことになります。ただし、告知の必要がない事案でも、特殊清掃がおこなわれたり、事件性や社会への影響が高い事案など、賃貸や売買の契約の判断に重要な影響を及ぼすような場合は告知する必要があります。
これによって、宅地建物取引業者や売主としては告知する基準が明確になり、取引後のトラブルを防ぐことにもつながりますし、賃貸オーナーの懸念も軽減され、単身高齢者でも物件が探しやすくなる可能性が高まります。
また、自宅における死因の8割以上は自然死と言われているため、残した家族に自宅の処分で迷惑をかけるかもしれない、といった所有者やその家族の心理的負担も軽減されるかもしれません。
ただし死への捉え方、考え方は人それぞれです。告知事項ではなくなった自然死や日常生活の中での不慮の死についても心理的負担と捉える買主・借主にとっては、自ら能動的に情報収集しないと分からない状態となります。
北斗不動産グループでは、お客様の立場や価値観の違いをしっかりと慮り、お客様にとっての幸せな不動産取引を目指したいと思います。